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インタビュー
【第2部】café TATI sweets店主 村井修二さんのインタビュー「フランス・帰国・帰郷編」
オノズカラシカルのスペシャルインタビューコーナーでは伊東市や伊豆で働いてる、活動しているなどのおもしろいヒトを紹介していきます。おもしろいというのはただ単にFUNNYというわけではなく、自分の人生を楽しく、面白く生きてるヒト、元気に生きてるヒト。
このようなヒトに突撃インタビューをして語ってもらっちゃおう!というコーナーです(アポはとります)
今回は前回の続きとして、【第2部】café TATI sweets店主 村井修二さんのインタビュー「フランス・帰国・帰郷編」をお届けします。
まだ第1部を読んでないヒトは、ぜひお読みください。
【第1部】café TATI sweets店主 村井修二さんインタビュー「学生・就職・東京編」
前回のおさらいをしておくと、村井さんはあがり症でしたが、ヒトを楽しませるのが好きで学生時代のバイトを通じて飲食の世界へ。そして伊東市内にあるリゾートホテルに就職。そこで師匠と呼べるヒトに出会い、飲食のサービスとしての面白さに開眼していきます。そのまま伊東で過ごしていくのかと思いきや、その道を追求するべく数年後には、東京銀座にあるフランスレストラン、マキシム・ド・パリ(現在は閉店)へ。さらにはフランスでの研修をきっかけに本場で学びたいという思いから、フランスへ修行へ。
ここから今回の話に入って行きます。村井さんは一体どのようなことをフランスで学ばれてきたのか。
【第2部】café TATI sweets店主 村井修二さんのインタビュー「フランス・帰国・帰郷編」をどうぞお楽しみください。
インタビュアー:フランスではマキシムや所属していた協会の提携先で働いていたんですか?
紹介してもらったんですけど、最終的には自分で働きたいところを探して働かせてもらって。フランスには一年位行ってました。
フランスで働いてたお店はウストード ボーマニエールっていうプロヴァンスにあるお店で、今は二ツ星なんですけど昔からずっと三ツ星のお店で。
やっぱり三ツ星なので、ピカソだったり歴代の大統領だったり、モナコの国王だったり、エリザベス女王とかが来ていたレストランだったんですね。
インタビュアー:すごい所で働かれていたんですね!フランス料理の本場はどうでしたか?
本当に大変なこともたくさんで、フランス語もそんなに喋れるわけではないので。だからスタッフとか仲間からも馬鹿にされたこともあったり。だけど最終的には同じ人間だしっていうのは強く思いましたね。
私は日本でマキシムで働いていたので、サービスとしては何年かちゃんとやってきてるというか、日本では準備をちゃんとするということをしっかりと教えられたんです。
プロヴァンスの人は準備をするというかインスピレーションで動いてることが多いので。もちろんちゃんとしてる人はちゃんとしてるんですけどね。
プロヴァンサルっていう言葉があるんですけど、プロヴァンスのとか、プロヴァンスの人のとかいう意味なんですけど。7時の約束でも8時に来てもいいよみたいな。そういうノリの人が多いんですよね。
私は10人のパーティがあるなら、シェフにパーティのメニューを聞いて、そのために何を用意したら良いのかっていうのをちゃんと用意するっていうのを日本で習ってきたので、そういう方が効率的だし、お客さんにとっても良いことだからっていうことで、そういう風にやっていたんです。
そうやってやることやってたら徐々に私を選んでくれて、今日は大事なお客さんが来るから、修二入ってくれみたいな話でやらさせてもらったり。大体2.3人のチームでやることが多いんですけど、一番上が居て、その下がいて、またその下がいるみたいな。そういう中で私の下にフランス人を使わせてもらえたりとかもあったり任せてもらったりもしました。とかっていうのはすごく良い自信になりましたね。
それでなんかやっぱり同じ人間なんだなって思ったのが、やることやってればちゃんと認めてくれる。フランスは実力社会というか、日本よりもそういうのが強いのかなと思いました。
それと、日本では先輩だったら何々さんと呼ぶのが礼儀だと思うんですけど、フランスだったらセルジュとかジャン・クロードとかって、みんな同じなんですよね。支配人のことでさえ、ジャン・クロードって呼んだり。その辺がフラット。
だから喧嘩もしましたね。「おめえの方がちゃんとやってねえじゃねえか」とか(笑)
言葉はうまく言えないんですけど、掴み合いになったりとかっていうのもあって。でもそういうのも自信になった部分はありますね。
インタビュアー:すごい!カッコいいですね〜。そのお店で1年働いた後に日本に帰国することになったんですよね?帰る時はどんな気持ちでしたか?
大変なこともいろいろとあったんですけど、やっぱりもうちょっと居たいっていうのはありましたね。でも、マキシムにも迷惑をかけているというか、まだ東京の店に籍もあったので、新しいことを始めるから帰ってこいという通知が来まして。
まあ帰らなきゃっていう諦めと、ホッとした部分もあったといえばあったんですよね。それと期待ですかね。
鳴り物入りっていうわけではないですけど、フランスでやってきた自分を日本で試したいっていう気持ちもあったので。でもフランス語をすごい喋れるようになったってわけでもなかったですけどね(笑)
インタビュアー:本場フランスではどんなことを学んだことが大きかったですか?
当初フランスに行った時に知りたかったような、どういう時にフランス料理っていうシチュエーションを選んで、何を期待してお店に来てるのかっていうのは分かったような気がしますね。
やっぱりみなさんそういうところにくるのはスペシャルな時。
フランス料理なので、フランス人がどう思ってるかっていうのが一種の正解なので、それを知ったっていうのは自分の中ではすごい大きな収穫だったんですよね。
それと、マナーっていうのは周りの人に迷惑をかけなければっていうこと。
フランス料理というと、ナイフも右側から使ってとかややこしいことはあるにはあるんですけど、そういうことよりもガチャガチャ音を立てないとか。気持ちの問題というか、相手を思いやる気持ちを持つということを学んだ感じですね。
後は、特にフランスの場合は大人社会なんですよね。例えば三ツ星レストランとかは基本的に子供はいないんですよ。リゾート地とかはまた違うんですけども。そうすると子供はベビーシッターさんに預けて来たりとか。
大人の社会を大事にしているっていうのは、子供を大事にしていないわけではなくて、子供も大人になったらああいうところに行きたいって思う場所にしてあげるている感じなんですね。
お父さんとお母さんが楽しんでる姿に子どもたちが近づきたいとか。「ああいう大人に早くなりたい」と。だから(子どもたちは)その日のために家でナイフとフォークの練習をしたり。
やっぱりそうなるとお父さんとかもちゃんとしてなきゃいけないっていう戒(いまし)めみたいなのもあると思うんですよ。
インタビュアー:なるほど〜。それは確かに日本とは違う文化というか傾向ですよね。とても興味深いです。
そうですね。小さい頃からワインを水で薄めて飲むとか、そういうのはフランスではあるんですね。自分の土地で生まれたワインを飲むのは当たり前のことだと考えているんですね。
フランスではマリアージュといって食べ合わせという意味なんですけど、生牡蠣にはシャブリワインが合うとかいう話はよくあるんです。
生牡蠣が採れるのは海で、シャブリワインというのは今は内陸で作っているんですけど、実はもともとそこは海だったんですよ。牡蠣がいっぱい取れる土壌で。だから内陸でも蠣の殻とかがいっぱい残っていて、牡蠣のミネラル分とシャブリのミネラル分があうとか言われているわけなんです。つまりその場所で採れるお酒と料理っていうのは基本的にマッチングは最高なんですね。
そんな風に、自分が生まれた土地の地物を食べるというか、自分の土地のものをすごい愛しているんですよね。そういうのがあるので、どんどん子供達にも伝統を教えてっていくっていうのはある感じですね。
そういう伝統があるっていうのは根強いっていうか、例えばフランス人が鴨とかを捌いてても、違うんですよ毎回。
お客さんに合わせてマダムのところには少し柔らかいところを渡すとか、ムッシュには力強いところを渡すとか、っていうインスピレーションで、盛り方を変えていくとかがあって。
やっぱりそれは歴史だったりとか、血だったりDNAなのかなっていうのはすごい感じたんです。そういうところから、お客さんにフレキシブルな対応で少しづつタイトに合わせていくっていうところは学びましたね。
日本だと先輩に言われたようにやるっていうのが一番綺麗にできるって思うんですね。基本があってそこから外れることはあまりないんですけど。でも、そのパターンはいっぱいあるんですよね。
だからマキシムでやってよかったのが、すごい高いスタンダードを学んでたんですよ。そこでやっていたから後はどうにでもできるみたいな。イタリア料理でもスペイン料理でも、その土着とか流れを覚えれば、できるっていう自負はできたんですよね。
インタビュアー:なるほどです。フランスから帰国後はそのマキシムさんに勤めていたと思うのですが、マキシムを辞めたのは伊東に帰るためだったんですか?
伊東に帰ろうと決めたのは、本当は3年だけっていうことで東京に行ってたんですね。でも3年じゃ勉強しきれないってことで結局8年くらい行ってて、だからもうそろそろ帰らなきゃまずいなって思って。
フランス行って、マキシムに勤めて、まあそろそろかなと思って辞めた感じなんですけど。
インタビュアー:伊東に戻ってきてからは、また勤めに?
そうですね、今はなくなっちゃったんですけど、一碧湖の近くに一碧湖ホテルというリゾートホテルがあって、そこの料理長と、もともと伊東でやってた時の料理長が知り合いで、ちょっと話をしたら、ぜひぜひ来てくれという話になって。それでレストランのマネージャーみたいな形で入ることになりました。
その後、一碧湖ホテルを辞めてからcafé TATIを始める前に、お店を開店させるための準備期間をもうけてたんですけど、その時に師匠(第1部で登場)が滋賀の方でお店を何件かやってて、そこにヘルプみたいな形で行ったりしてて、イタリアンの居酒屋で働いてたこともあったんです。
イタリアンなんだけど居酒屋っていう。
ここは今のcafé TATI sweets通じてくるんですけど、元はフレンチでちゃんとしてるけど砕けた状態。
マキシムとかフランスで高いスタンダードを学んだつもりでいるので、崩しようはいくらでもあるんですよね。café TATI sweetsで出してる料理も私は作らないんですけど、フレンチのいろんなことを経験してきたので、それを伊東風にしたらどうなるのかとか、ハイブリッドというと大げさですけどもそういう意識で作ってますね。
新しいメニューをリリースする時は、私のアイデアとその土着、オリジナルっていうもので得点を付けていくという感覚なんです。で20点満点で、17.18点を狙っていくっていう感じなんですよね。
だから合格点を17.18点にしてて、それも加点方式だと思ってるので、素材で12点取ってて、後の調理方法とかで5点で、もうちょっと足りないっていうとそこにオリジナリティを足していくっていう感じにしてます。
まだ何か足りないとか、出したものが何か分からないっていうのが一番よくないと思ってるんですよね。だからはっきりさせなきゃいけない。食べた人がこれはサバだとか、これは今までに見たことがないというのをちゃんと感じてもらいたい。
オリジナルというのは感じてもらいやすいっていうか、今までに体験したことがないものって一番得点がつけにくいと思うんですね。
例えば牛肉の赤ワイン煮なんていうと、よくある料理なんですけど、赤ワインを伊豆で作った赤味噌に変えて作るとか、それにちょっとコクを出すとか、そういうちょっと、地元×オリジナル×フレンチの古典とかで、今までやったことをないことを狙ってるんですね。
インタビュアー:基本的に村井さんのインスピレーションでメニューを作り上げている感じなんですか?
そうですね。まあフランスが好きなんで、赤ワイン煮を作りたいと思うけども、本当に作るのは結構たいへんなので、そこを短縮しながらも、それっぽくどう出せるかっていう、最後はTATI風にしちゃえばなんでも良いんじゃないかっていう気持ちがあるんですよね(笑)
でその感じたことがないものを出すっていうことで、お客様の感動だったり、おっ!TATIっておもしろいねって思ってもらえればっていう、結局は「なんかここにくればなんかおもしろいね」って思ってもらいたいので。そのネタを散りばめているという感覚でやってるんです。
インタビュアー:それを基本がない人がやっちゃうと、ただの奇をてらうみたいになっちゃうんですね?
そうですね、やっぱり奇をてらって元がないっていう感じなっちゃうんですけど。マキシムもフランスでの経験も、その後のイタリア居酒屋も然り、そういうエッセンスも自分に向けてくるというか。
たとえばハーブの話でいうと、プロヴァンスのお店ではハーブティだけのメニュー表があったんですね。ドライとフレッシュっていうのがまずあって、オーダーが入った時に、あっ修二これ取ってきてって言ってはさみを渡されるんですよ上司に。それで外でローズマリー取ってこいって。それって一番最高にいい状態だと思うんですよね。やっぱり萎れてきてしまったりすると味も香りも落ちてしまうんで。
モナコに研修旅行にいった時も、大体フランス料理だとエスプレッソを飲むのが普通なんですけど、それをあえてハーブティにして、そうするとワゴンで鉢植えでもってきて、白い手袋をして、ドライとフレッシュどちらにしますか?って言って眼の前で切ってくれるんですよ。
café TATI sweets準備期間の時にも、熱海というか伊豆山の方のお店にちょっとヘルプの要請があって、そこでもハーブの知識を学んで。
これはもう伊東でぜったいやりたいと思って、ここでハーブを育てて、お客様のオーダーが入ると、あっじゃあ採ってきますっていってやってたりとか。ハーブだけでもそんな風に色々なところからエッセンスをもらってますね。

時期的にハーブはありませんでしたが、外にはオリーブの木が。

お店の入り口側にはレモンの木があります。
それでお客さんにちょっと外に出るのでお留守番しててくださいとか言って外に採りにいったりとか、そうするとお客さんもなんのこと?とかなったりとか。そういう演出が好きなので、パフォーマンスも売りの一つにするっていう。
ただ、メニューに書いてあるんですけど、ハーブティは暖かい時期だけって書いてあるんですよ。ハーブがならない時は出せないっていうことで、あえて限定にしてますね。
その場で摘んだものをお出しするっていうと、私のために今摘んで来てくれたんだっていうのは、やっぱりお客さんはとても喜んでくれるので。
そういうのをやっているのはすごい分かってる人か、グラメゾンと言って凄くいいレストランとかで。
箱根のオーベルジュ オー・ミラドーっていう、オーベルジュを日本で始めた第一人者の方のお店があるんですけど。オーベルジュっていうのは泊まれることができる高級レストランなんです。そこでもハーブを切ったりとかしてくれるんですね。
そういうハーブティや良いエッセンスを取り入れてこの伊東のカフェをやってるっていう自負はありますね。
第2部 完
【第3部】café TATI sweets店主 村井修二さんのインタビュー「café TATI sweets編」へ続く
まだ第1部を読んでないヒトは、ぜひお読みください。
【第1部】café TATI sweets店主 村井修二さんインタビュー「学生・就職・東京編」
店舗情報

住所:静岡県伊東市渚町2-6 (Mapで見る)
定休:月曜定休日(月に1度連休有)
営業時間:11:30~18:30
ランチメニューは15:00まで
駐車場:あり(5台)
2000円以上のご利用で隣接する市営大川橋駐車場のチケット1時間分お出しします。
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